ヘリンボーンの床にするだけで、奥行きや高級感が生まれます。お部屋の雰囲気がぐっと華やかになるため、余計な飾りがいらないほど。
そもそもヘリンボーンは、木目を90度に交差させて張って床に表情をつくりだす、ヨーロッパの伝統的な技法です。herring=ニシン、bone=骨。つまりニシンという魚の骨のカタチに似ていることから、そう名付けられました。日本では、明治・大正時代の洋館でヘリンボーンの床を見ることができます。
しかし、「どんな空間に合うの?」「いくらくらいかかるの?」「全室ヘリンボーンにしたほうがいい?」など、たくさんの疑問があるのでは。
そこで今回は、ヘリンボーンの床のすべてをご紹介します。
ヘリンボーンの床がリノベーションでも大人気!でもなぜ?
「リノベーションするならヘリンボーンの床にしたい」という方がいました。なぜでしょうか?
それは、リノベーションか注文住宅でもなければ、床をヘリンボーンにできないからです。一方向に張るフローリングに比べ、ヘリンボーンのフローリングは手間(工期)、コストががかかります。
効率を重視するマンションのデベロッパーや建売住宅のハウスメーカーは、「ぜったいにやりたくない」というのが本音。ヘリンボーンの床が標準仕様になっていることなんて、ないはずです。ヘリンボーンの床は、自分で内装をセレクトするリノベーションだからこそ、できることなのです。
ヘリンボーンの床は「どこがどうむずかしいのか」をリノベーションの現場監督に聞いてみると、
「ヘリンボーン用のフローリングって、普通のフローリングよりも小さいんです。それをナナメに張るとなると、ズレやすい。手慣れた職人さんでも、貼る前にきちんと墨出しをしています。全体の基準となる最初の一列を張るときは、かなり慎重になってますね。そこに合わせて並べて行くので、ヘリンボーンの床の施工は時間がかかります」
なるほど。
なんとなくやってみたいな~と思ってチャレンジするにはハードルが高い床ですね。
ヘリンボーンの床が演出する、心地よい3つの空間
〈1〉ヘリンボーンの床で、クラシカルな空間に
クラシカルな雰囲気を演出するヘリンボーン。クラシカルなインテリアでまとめたLDKは、そのイメージにぴったりです。
ヘリンボーンの床に使ったのは、ローズウッドの無垢材。あえて細めのフローリングを使い、引き締まった印象に仕上げています。ローズウッドは希少価値が高い木材で、昔から高級家具などに使われてきました。堅く、紫がかった色合いが、格調高い空気をつくりだします。そんな最高品質の木材をヘリンボーンで仕上げたのですから…その存在感は言うまでもないでしょう。踏みつけるのが恐れ多いほどの美しさです。
植物油でできた自然塗料で仕上げ、ローズウッドの無垢の肌ざわり、経年変化をたのしめるように。ご愛用の家具にも相性抜群。ヘリンボーンの存在が際立つよう、壁や天井は白で統一したこともポイントです。
ヘリンボーンの王道派とも言える、クラシカルなインテリアですね。
〈2〉ヘリンボーンの床で、リラックスできる空気感
ヘリンボーンの床を使ったことで、空間に奥行きとリラックス感が生まれています。
テラスに向かって大きく開いたLDK。ヘリンボーンの床には、”光を多方向に拡散させる”という特徴があります。そうすると、空間の方向性が曖昧になり、やわらかさと奥行きが生まれ、見ていると心もやわらかに。一方向に張ったフローリングが地平線の見える海だとしたら、ヘリンボーンのフローリングは森のようなもの。種類や高さの違う樹に心がいやされる、といった感じでしょうか。
こちらのヘリンボーンの床材には、”高級感”の代名詞でもあるローズウッドを使用。一方、勾配天井に張ったのは、ウッドデッキなどにも使われるレッドシダーです。空間の印象が重くならないように、床のローズウッドよりも明るめの樹種を選び、ラフに仕上げました。
ローズウッドやレッドシダーのほかに、桐、杉、珪藻土といった自然素材を使い、質感ゆたかに仕上げた住まい。開放的でくつろげて、どこか懐かしくもあります。ヘリンボーンの床材によって、どこにもないオリジナリティが生まれました。
〈3〉ヘリンボーンの床で、オーセンティックに
イメージは古いロフトアパートメント。壁に色を塗ったり、タイルを貼ったり。自分たちで手を加えながら古い建物で暮らし続ける、欧米の暮らし方を意識しています。
こちらのお施主さまは、ジャン・プルーヴェやシャルロット・ペリアンなどがお好きで、いくつものヴィンテージ家具をお持ち。それが馴染むように、書斎から寝室にかけての床は、ヘリンボーンに張りました。ヘリンボーンの床のやわらかな表情が、やさしいフォルムの家具にフィットしています。
床の素材はオーク(ナラ)の無垢材。木目がはっきりとあらわれ、良質な素材感を感じることができます。経年すると徐々に色が深まってくるのも、たのしみの一つです。
壁は、明るいグレーのペンキを、ラフに塗装。光が当たると塗りムラや刷毛跡が浮かび、ヘリンボーンの床のやわらかさと、不思議なくらい調和します。
インダストリアルなクールさがある1階のLDKに対し、2階のプライペート空間はオーセンティックな雰囲気。階段を上がると、誰にも邪魔されない静かなくつろぎが訪れます。
ヘリンボーンの床には、実はデメリットも...
〈工期とコストがかかる〉
冒頭でもお伝えしましたが、ヘリンボーンの施工は手間がかかります。一般的な貼り方に比べると工期は2倍、コストは2倍(同じ樹種を使った場合)に。「家中どこでもヘリンボーン」ではなく、リビングなどメインのスペースだけにするなどし、コストバランスを図りましょう。
〈狭い部屋には不向き〉
ヘリンボーンはインパクトが強いため、狭い部屋だと圧迫感が出てしまいます。できれば、ゆったりとしたLDKにヘリンボーンを取り入れましょう。
「広さはないけれど、どうしてもヘリンボーンの床にしたい」という場合は、幅が細いフローリングをセレクトしてみてください。幅広のタイプよりも繊細なイメージなので、空間を圧迫することもありません。
〈安い家具が似合わない〉
高級感が出るのが、ヘリンボーンの床のいいところ。しかし、それがあだになることも…。リノベーションで憧れのヘリンボーンにしたけれど、「とりあえず独身時代から使ってるソファでも置いとくか」なんてやってみたら。「…貧乏臭い? こんなはずじゃ… 」と。ヘリンボーンにかかかると、チープな家具はますますチープに、上質な家具はより高級に見えてきます。
もしラフな家具がお好きなら、明るい色の木でヘリンボーンにしてみましょう。重厚なイメージのヘリンボーンの床でも、ナチュラルで親しみやすい印象に。お持ちの家具や、お好きな家具に合わせて、樹種をセレクトすることが大切です。
まとめ
いかがでしょうか。
クラシカルなイメージの強いヘリンボーンですが、リラックスした空間だったり、オーセンティックな空間だったりと、多様性があることがわかります。
濃い色の木…重厚でクラシカルな雰囲気に
明るい色の木…カジュアルでリラックスできる雰囲気に
木幅が太い…重厚でどっしりとしたイメージ
木幅が細い…繊細でシャープなイメージに
もし、ヘリンボーンの床にするか、普通の張り方にするか迷っているなら、リノベーション会社にも相談してみましょう。工期やコストを考慮しながら、ベストなプランを提案してくれます。「フローリングのせいで、予算オーバーしちゃった」なんていうことは避けたいですしね。