〈ホームインスペクション〉という言葉をよく耳にするようになりました。横浜の杭打ちデータ偽造事件以降、消費者のなかには「この家、ほんとうに大丈夫?」という思いが募っています。
そんな不安を一気に解決するのが、ホームインスペクション。
外壁にクラックはないか、天井に水漏れ跡はないか、建物の土台が腐食していないかなどを、細かくチェックしていく住宅診断のこと。対象となるのは、〈今住んでいるマンション、一戸建て〉〈買おうと思っている中古マンション、中古一戸建て〉です。
では、なぜホームインスペクションが大切なのか。どのようなことをやるのか、どのようなメリットが? これから詳しくご説明します。
まずはホームインスペクションの基本を知っておこう
ホームインスペクションって、そもそも何なの?
ホームインスペクションとは、住宅の設計や施工に精通したホームインスペクターと呼ばれる専門家が、第三者的な立場から住宅の劣化状況、欠陥のありなし、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行うこと。
〈住宅の健康診断〉といったところでしょうか。
つまりホームインスペクターは住宅診断のプロ。建築・不動産取引・住宅診断方法などの高い知識と倫理観があり、住宅全体の劣化状況や欠陥の有無をチェックし、メンテナンスすべき部分やその時期、その費用などを第三者的な立場でアドバイスする専門家です。
とくに中古物件は、「築年数が古いけど、買って大丈夫?」なんて心配が。ホームインスペクションの診断結果がよくなければ、「買わない」という選択肢もあり得るのです。ホームインスペクションは、「欠陥住宅を買いたくない」という人が活用すべきもの。新築・中古を問わず、家を買うときやリフォームをするとき、あらゆる住まいに必要です。
ホームインスペクションができた背景
中古住宅の流通が活発なアメリカでは、ホームインスペクションが当たり前のように行われています。
ここ数年、日本でも中古を買ってリフォームする方が増えてきました。そこで「一生に一度か二度の買い物だから、多少の費用をかけてでも安心して買いたい」というニーズが出てきたのです。中古住宅の購入時だけでなく、新築時、リフォームの際などにも、ホームインスペクションが行われています。
とくに中古物件を買う方は「耐震的に大丈夫かな」「希望通りにリフォームできるだろうか」「実家はかなり古いけど、まだ住めるかな」「カビが出るんだけど、どこか問題あるのかな」といったさまざまな悩みをお持ちです。こういったときこそ、ホームインスペクションの出番。住まいのコンディションをきめ細かにチェックすることで、長く安心して暮らせるようになります。
ホームインスペクションの効果はいかに?
ホームインスペクションは、中古物件を買う人にたくさんのメリットをもたらします。
・第3者である専門家のチェックにより安心できる
・いつ頃、どの程度のメンテナンスが必要となるか、見通しを立てられる
・構造、設備などの住まいのコンディションがわかる
・リフォーム計画の有力な資料になる
・家の履歴書を残して資産価値を保てる
また、不動産会社や売り主としても、
・中古住宅のコンディションを提示することで売りやすくなる
・売った後、買い主とのトラブルを未然に防ぐ
売り主、買い主のお互いにメリットが生まれることから、ホームインスペクションが広く浸透するようになってきたようです。
ホームインスペクションの具体的な流れ、内容
ホームインスペクションは、項目にしたがって、外壁のクラックや室内の雨漏りを〈目視〉で調査します。調査箇所ごとに、以下のような細かな項目が定められています。
屋外:屋根、外壁、基礎、外構
室内:壁、柱、天井等の仕上げの剥がれ、亀裂、カビ、建具の動作
床下:土台、束などの緩み、浮き、腐食
小屋裏天井裏:雨漏りの有無。梁、桁、接合部の腐食、緩み、割れ
設備:給排水・換気設備の動作全般、漏水の確認
これらを専門家が目視でチェックし、写真付きの報告書としてまとめます。家の持ち主に報告するまでがホームインスペクションの役割です。もし「あやしいぞ」と思ったら、専門の機関にしっかりと精密検査を行ってもらいます。健康診断でも、まずは全身をチェックし、異常が見つかったら、専門の医師に詳しく診てもらいますよね。冒頭でお伝えしたように、その前の〈健康診断〉が、ホームインスペクションです。
中古物件でホームインスペクションを行うタイミングは?
お持ちのお住まいなら、ホームインスペクションはリフォーム前のお好きなタイミングでも大丈夫です。ちょっと迷うのは、中古物件を買う場合の、ホームインスペクションのタイミング。
物件を買うときは、基本的に申し込み→契約という流れです。申し込みには手続きがあるので、できれば申し込み前にホームインスペクションをしたいところですが。のんびりしていると、他の人に物件を買われてしまうことがあります。
狙った物件を逃しては本末転倒です。やはり、申し込みをした後に、ホームインスペクションを行うのがよいでしょう。この時点では契約前のなので、仮に問題がある物件だとわかったら申し込みを解消でき、申込金も戻ってきます。
ホームインスペクションの費用は?
ホームインスペクションを行う会社によって、価格はさまざまです。目視のチェックだと5~6万円が一般的ですが、機械を使うと10万円以上になるケースも。しかし、リフォームや物件紹介の一環として、ホームインスペクションを無料で行っているリフォーム会社もあります。
そもそもきちんとしたリフォーム会社なら、「うちはホームインスペクションをしていますよ」と言うまでもなく、既存の住まいの状態をチェックし、必要があれば補修します。リフォームをしたいけど「この家、大丈夫かな」と心配になったときは、まずはリフォーム会社に相談してみるのもよさそうです。
今のお住まいや中古物件をリフォームするとき、必要となるインスペクション。インスペクションも込み(無料)で、リフォームや物件紹介を行っています。
craft
まとめ
いかがでしょうか。
今、中古一戸建ての評価手法が国によって見直されています。これまでのように築20~25年の建物の価値がゼロになるのではなく、30年、40年と築年数が経過しても、安全性の高い住宅は高く評価されるようになるはずです。
物件購入時は住宅のコンディションを見極め、購入後は点検・メンテナンスが大切により住宅の価値をキープすることが大切です。ホームインスペクションは、新築や中古の購入時、リフォームなど、節目節目で欠かせない、住まいの健康診断となるでしょう。