クラフトの五感に響くモデルルームをご存知ですか? 青山・自由が丘の2カ所にあり、それぞれデザインコンセプトが違っています。
シンプルな木の素材感がお好きな方は、青山モデルルームへ。
ヴィンテージやラフなテイストがお好きな方は、自由が丘モデルルームへ。
今回みなさまをご招待するのは、自由が丘モデルルームです。築50年のビルの一室をスケルトンリノベーションしました。
デッキのアプローチが目印。クールなスチールドアを開けば
自由が丘駅の正面口からゆっくり歩いて5分ほど。IDÉE SHOPのお隣の白いビルの2Fです。ウッドデッキを張ったアプローチが目印となっています。
デッキはクランクするところで縦張りに、さらに途中から煉瓦に切り替わっています。煉瓦はそのままガラスの框ドアの先へ。ガラス越しに床の連続を見せ、内と外にをつながりをつくっています。
縁をはっきりと切るのではなく、曖昧にすることでゆとりを感じさせる。クラフトのリノベーション実例でもたびたび見られる手法です。
框ドアは黒焼付塗装のスチール製。なかなかの手応えなので、ぐいっと力を入れて開けてくださいね。
ほの暗い階段室に、アンティーク煉瓦の壁
あえて光量を抑えた階段室。壁一面のアンティーク煉瓦は、アッパーライトで照らされてアンニュイな面持ちです。
目地材の質感やボリュームを調整しながら、実際に煉瓦を積み上げたようなリアリティを追求しています。間にはボーダーの黒い煉瓦を入れ、凹凸や陰影によって趣を深めています。
これまで貼られていたタイルを剥がしてコンクリートあらわしに。真鍮の滑り止でアクセントをつくりました。できるだけ既存を活かしていますが、住宅の階段としては広すぎるという問題が。
そこでサイズの違うステージをランダムに配置し、スケールを調整しています。
階段を上がりきると、玄関ホールが。階段室と玄関ホールの間にあったコンクリートブロックをなくし、見通しを高めました。階段を上がりながら、少しずつ居室の気配を感じられるように。
上がり框は人研ぎ仕上げです。うつくしい光沢が出るまで職人さんが丁寧に磨き上げてくれました。つるつるとした足ざわりを感じながら靴を脱いでください。
入り口はオークの無垢材を使った框ドア。ずっしりと重みのあるドアを開くと…
静寂に包まれたLDKは、どこかなつかしい
古民家や古い洋館を訪れたような静寂さに包まれたLDK。遠い昔に引き戻されたような、あたたかさと懐かしさを感じます。
理由は、素材にあります。
フローリングは赤褐色のピンカドです。無垢そのものの質感が伝わるオイル仕上げ。無垢ならではの重厚感があり、踏むたびにしっかりと体重を受け止めてくれます。
使っていくうちにでてくる汚れも変色も、やがて味わいに
キッチン側の壁はモルタル塗りです。白いモルタルに亜麻色のモルタルを重ね、淡くやさしい表情をつくりだしています。
シンクの天板と棚は、ナラで造作。棚には洗ったカップや調味料を置くわけではありません。お気に入りの小物や花を飾るためのスペース。カウンター収納の取っ手はレザーと、既製品のキッチンには使われない素材を使用しました。アイランドキッチンと、背面カウンターの天板は人研ぎ仕上げです。
「やがて変色するけど、それも味わいになる」
ただ機能性だけを追求するだけのリノベーションへ、ささやかなアンチテーゼ。
こもったようなくつろぎが訪れる
ダイニングに対してリビングは、床と天井を低めに。こもったようなくつろぎを感じさせます。
壁の一部はモルタル塗りに。キッチンとは異なり、今度は黒いモルタルに白いモルタルを重ねました。グレーに白が淡く浮かぶ様子には、モルタルの冷たさではなく、職人さんの手仕事のぬくもりがたっぷりとあらわれています。天井にはオーク無垢材を使った框組のパネルを。框と鏡板の傾斜角度を調整し、クラシカルになりすぎないように配慮しています。
リビングの棚にはレコードやミニカー、どこかの海岸でひろってきた流木や、骨董屋さんで見つけた用途不明な道具たち。本はオシャレな洋書もあれば、水滸伝もあり、全てがざっくばらんに置かれています。
「人の家って、こんなもんだよね」と納得しながらも、玄人っぽいクールさを感じずにはいられません。暮らしに必要なものや、趣味のもの、ガラクタさえもカッコよく見えるように計画しています。
あえて壁をつくり個室のようなスペースに
リノベーションでよくあるリクエストが「壁をなくして広くしたい」というもの。しかしこちらのリビングには、あえて壁を設けています。
ソファに座るとダイニングの視線がほどよく遮られ、まるで個室にいるような感覚に。「家族と過ごしたいけど、ゆっくり本も読みたいな」というときがありますよね。この壁があるだけで、ダイニングの様子がまったく気にならないのです。
人の心地よさはそれぞれ。ソファにすわっていると『いつでもどこでも開放感が必要なわけじゃない』ことがわかります。
赤い壁に導かれた先は…
キッチンの横には赤い壁。ぱっと目を惹く鮮やかさです。赤い壁の向こう側には何があるのか。まったく想像もつきません。
とはいえタイル廊下や、赤い壁は「こっちにおいでよ」と誘惑しているようなもの。何だろう、何だろうと考えているうちに、なんだかものすごく広い空間が広がっているように思えてきます。そこも狙いの1つ。ミステリアスな部分を残し、見る人にイメージさせることで、実際以上の広がりを感じさせる効果があるのです。
ためらわずに、どんどん進んでみてください。
壁とタイルに導かれるように向かった先には、水まわりが広がっています。壁はあるけど、ドアはない。
…ドアはない?
なぜこのようなプランに?と聞かれたときに「”洗面室のドアはだいたい開けっ放し”という方が多いからです」とお答えしています。
洗面室のドアの主な役割は、脱衣を見せないこと。見えなければよいのです。
そこでバスルームと洗面室のレイアウトを工夫し、壁で視線を遮ることに。デザイン性ではなく「暮らしやすさ」を最優先する、クラフトらしいアイデアと言えますね。(もちろん湿気対策も万全に行います)
大きな洗面カウンターも人研ぎ仕上げです。水の流れを考えた一番シンプルな形で洗面台を造作。下地の上からモルタルを塗り、ややラフに研いでマットに仕上げました。
まとめ
「古いものに新しい価値を与える」
というコンセプトでスタートした、クラフトのモデルルームづくり。モルタルやアンティーク煉瓦、真鍮や框組のドア、人研ぎ仕上げなど、昔ながらのデザイン・素材・工法を新しい発想で使いました。流行りのリノベーションではなく、クラフトにしかできないこと。そんな空間を目指して。
そのためにこだわったのが、既成概念にとらわれないプランとデザイン。デザイナーは「家は◯◯であるべき」という考え方を一度捨てて、まっさらな状態からプランを考えました。
五感に響く素材感や、光がもたらすスケール感、やさしく促されるような動線。また天井が低いところと高いところでは、声の響き方も人との距離感も違うことに気がつきます。
もしリノベーションをお考えなら、まずは気になる会社のモデルルームをいくつか訪れてみるとよいでしょう。センスのよいインテリアはもちろんですが、くつろいだ気分になれるか。長く暮らせば暮らすほど、味わいが生まれるか。そんなシンプルな視点で見てみてください。
モデルルームのご見学とともに、リノベーションのご相談を承っています。完全予約制のため、誰にも気兼ねせず、心ゆくまでおくつろぎいただけます。