名門クラシックホテル4選 〜歴史に残る名建築〜 | リノベーションスープ

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名門クラシックホテル4選 〜歴史に残る名建築〜

インバウンド(訪日外国人)市場の拡大にともない、日本のホテルは建設ラッシュです。しかし、戦前にも外国人のためのホテルが、全国に建てられたことをご存知ですか?

それが、今の”クラシックホテル”として知られる、名門ホテルです。

クラシックホテルは「明治から昭和初期にかけてオープンし、今でもその建物で営業を続けているホテル」と定義されています。エントランスやロビー、廊下の隅々に、これまで積み重ねられてきた歴史性を感じることができます。人々を圧倒するような個性を放ちながらも、宿泊客をゆったりと包み込む懐の深さを持っています。

今回は、クラシックホテルの魅力についてお話しします。

クラシックホテルの代表格!横浜・ホテルニューグランド

横浜の山下公園前にたたずむホテルニューグランド。「山下公園の情緒はニューグランドがつくっている」といえるほど、横浜になくてはならないクラシックホテルです。

1927年。訪日外国人向けホテルとして本館が建設されました。設計したのは銀座和光を手掛けた渡辺仁。ほかのクラシックホテルは和洋折衷の木造が多いのに対し、こちらはモダニズムを感じさせる鉄骨鉄筋コンクリートです。

ぜひ見ていただきたいのは、本館のエントランスから入って正面の大階段。重厚なタイルや石、真鍮が散りばめられ、ニューグランドの格式高さを象徴しています。その階段を上がると、大広間に続くロビー。柱や梁には瀟洒なアールデコの装飾が施され、かすかにジャポニズムな雰囲気も。窓からは横浜港に浮かぶ氷川丸を眺めることができ、観光客でにぎわう横浜とは思えないほど静謐な空間です。

このクラシックホテルには、たくさんの著名人が宿泊したことは有名です。なかでもマッカーサーが執務室として使っていた315室は、現在〈マッカーサースイート〉として泊まることができます。

意外にも、気軽に入りやすい気さくな雰囲気。横浜に訪れたら、立ち寄りたいクラシックホテルの一つ。近代化産業遺産、横浜市歴史的建造物に指定されています。
 

和洋折衷のクラシックホテル、箱根・富士屋ホテル

1878年。富士屋ホテルは、本格的なリゾートホテルとして誕生しました。その後、外国人専用として経営方針を変え、多くの外国人客でにぎわうようになりました。

1891年に建てられた本館は、木造洋風建築。今でも富士屋ホテルの正面玄関として活躍しています。一階はフロントとロビー、二階の客室も当時のままです。神社などに多く見られる唐破風の玄関には、木製框の回転扉が設置されています。。扉を押すときに、ずっしりとした手応え。日本で今も使われている回転扉のなかでは、一番古いのだそうです。

とりわけ注目したいのが、メインダイニングの「ザ・フジヤ」。天井は、仏堂などにも見られる、格式高い折り上げ格天井。中央部分が高くなっており、その高さは5.5m。しかも、格間の一つ一つに4つの草木が描かれ、‪格縁‬にまで繊細な模様が施されています。見上げては「ほー」っとため息。ずっと眺めていたくなるような、素敵な空間です。これこそクラシックホテルの醍醐味ですね。

1906年には西洋館、1936年には花御殿、1960年にはフォレスト館が誕生。現在の和洋折衷のスタイルが完成しました。箱根を代表するクラシックホテルとして君臨しています。

和洋折衷な豪華さがただよう、箱根・宮の下のクラシックホテル。周囲は古くからある骨董屋さんやパン屋さんがあり、日帰りで訪れてもたのしめます。
 

避暑地のクラシックホテル、軽井沢・万平ホテル

このコンパクトさが避暑地の軽井沢にぴったりです。こんなプライベート感のあるクラシックホテルは、全国でもめずらしいでしょう。万平ホテルの創業は1894年。もともとは江戸時代から続く旅籠(宿屋)でした。しかし明治中期、外国人の避暑地としてにぎわっていた軽井沢で、欧米人向けのホテルに改装したのが、万平ホテルのはじまりです。

本館であるアルプス館は、1936年に建てられた時のまま。スイスの山小屋を思わせるこじんまりした建物です。設計者は久米権九郎。ドイツ留学で学んだ耐震工法から考えだした〈久米式耐震木構造〉が取り入れられています。ちなみに、久米権九郎氏のお兄さんは1923年の関東大震災で亡くなったそうで、「地震に強い建物をつくる」とひたすら耐震性にこだわった理由は、ここにあるようです。

ロビーの床には赤い絨毯が敷き詰められ、正面にはステンドグラス。戦前、軽井沢で休暇を過ごす華族たちの牧歌的な様子をモチーフにしたのだと思います。フロントのスタッフの方々は、都心のホテルのようにきびきび働く、という印象ではありません。どことなくゆったりとやわらかい物腰で、これがまたクラシックホテルの雰囲気にぴったりです。

フロント横の階段を上ると、アルプス館の客室。ワンルームでですが、ベッドルームと、ちょっとしたサンルームのようなスペースが、間仕切りでゆるやかに仕切られています。床の間があったり、軽井沢彫りの箪笥があったりと和洋折衷ですが、壁や天井のタテヨコを強調したデザインが美しい。海外のゲストを最高にもてなそうとした気持ちが伝わってくるようです。本物のアンティークガラスの向こうには白樺の木がゆらぎ、80年前に押し戻されたような気分を味わえます。

避暑地にふさわしい静謐なクラシックホテル。カフェテラスで提供するミルクティーは、毎年夏を万平ホテルで過ごしたジョン・レノンの要望で生まれたそうです。
 
万平ホテル HP

西のクラシックホテルと言えば、奈良ホテル

奈良ホテル

1909年。関西の迎賓館として誕生した、西を代表するクラシックホテルです。設計したのは、東京駅や日本銀行本店で知られる辰野金吾。

本館は木造2階建てで、漆喰の壁と瓦葺き屋根。外観を見る限りではホテルのような華やかさはなく、”立派なお寺”といった印象。背筋が伸びるような張りつめた思いでドアを開けると、あら、別世界。

エントランスホールの上部は吹き抜けで、開放感があります。格天井には春日大社の釣灯籠をモチーフにしたシャンデリアが設けられており、歴史の重みが一気に押し寄せてくるようです。他のクラシックホテルとは趣が異なり、和の趣が濃厚な印象です。

大きな階段には赤い絨毯が敷かれ、手すりはピカピカに磨き上げられています。仏閣のような荘厳さがただよう階段を上がると、本館の客室。

客室も思いのほか天井が高く、ゆったりと過ごせます。大正時代から使われているスチーム暖房、日本画などは全てアンティーク。和洋折衷のインテリアですが、余計な装飾がなく、窓の外に広がる奈良公園の景色を引き立てています。これから桜の季節におとずれたいクラシックホテルです。

神社仏閣を思わせる装飾に戸惑いつつも、敬意を払いたくなるような荘厳さには圧巻です。本館は近代文化遺産に指定されています。

まとめ

いかがでしょうか。

戦前にも、インバウンドを意識したホテルが誕生し、それが今のクラシックホテルとなったことがおわかりいただけたと思います。ただし、当時オープンしたホテルのうち、今でも営業を続け、かつ地域の歴史的建造物として大切にされているホテルは、残念ながらごくわずかです。

地域性を意識したオリジナルのデザイン・当時の最先端技術を駆使した建築・最上級の素材、そしておもてなしの心。どのクラシックホテルにも、〈最高級を求めた〉という点が共通しています。フランク・ロイド・ライトの設計した旧帝国ホテルが今も営業していれば、間違いなく世界を代表するクラシックホテルになっていたはずですが。(現在は愛知県の明治村に一部移築されています)

外国人を意識したことで、独自のデザイン性やサービスを築いてきたクラシックホテル。2020年の東京オリンピックに向けて今、ホテルが急増しています。かつてクラシックホテルが誕生したときのように、日本のホテルのニューウェーブとなるのでしょうか….?

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