モデルルームの写真を眺めていると、「こんなインテリアにできないかなぁ」なんて思うことがあります。そればそのはず。モデルルームは、住宅会社やリノベーション会社の広告塔。みなさんが「見に行ってみたい!」と思えるように、素敵にコーディネートされているのです。
「プロがコーディネートしてるんでしょ。マネできるわけないじゃん」
なんて声が聞こえてきそうですが、ちょっとしたコツさえつかめば、そこまで難しくはありません。
今回は、モデルルームのインテリアのつくり方を公開します。
〈モデルルームのインテリア1〉素材感をシンプルに伝える
モデルルームのインテリアにおいては、〈素材感〉がとても重要になってきます。写真ではなかなか伝わりにくいのですが、実際にモデルルームを訪れてみれば、はっきりとわかります。
たとえば、こちらのモデルルーム。ぱっと見るとごくシンプルな空間ですが、たくさんの自然素材が使われています。床はヨーロピアンオーク、壁は漆喰、珪藻土、ジョリパット。ドアや天井のルーバーにはオーク、カウンターにはトラバーチン。ところどころに鉄や黒皮鉄を使って、空間を引き締めていることもポイントです。
素足をやさしく受け止めるのは、スプーンカットのフローリング。壁には太陽やライトの光が当たり、珪藻土の塗りムラをおだやかに浮かび上がらせます。表情ゆたかな素材のひとつひとつが、贅沢なインテリアとなっているモデルルーム。経年変化が味わいになることも、自然素材のメリットです。
こうしたモデルルームのインテリアに、余計な飾りは無用。わずかな家具と照明、小物。そしてポイントとなるグリーンを控えめに置き、素材の表情や心地よさをたのしみましょう。
素材感がたっぷりと伝わる、モデルルームのインテリア実例でした。
築37年のマンションの一室をリノベーションしたモデルルーム。日曜日は予約不要の自由見学会を開催。素材の表情は、訪れてみなければわからない?!
craft青山モデルルーム
〈モデルルームのインテリア2〉濃淡や陰影で表情を
海外のインテリア雑誌などを見ていると、ヴィヴィットな赤やオレンジをアクセントに使っている例を見ることがあります。しかし、モノトーンカラーだけでも、十分クールなアクセントに。こちらのモデルルームのインテリアが、まさにその例です。
使った色は、黒とグレー。ただし、濃淡を持たせることで、床・壁・天井や収納のシルエットが際立ち、奥行きを感じる空間に。ごく控えめなのに、インパクトを感じさせてくれます。
モノトーンだけでまとめてしまうと、ちょっと冷たい印象になりますね。オフィスやショップならいいかもしれませんが、家族で過ごすとなると、くつろげないかもしれません。そこで、壁は職人さんの手仕事を感じるような塗装や左官仕上げ。ダイニングの床の一部はナラのフローリング、ダイニングテーブルと椅子も、ナラで製作しています。またリビングの床には火山石を貼るなど、自然素材のぬくもりが感じられるように工夫しました。
夜になると、スリットからは間接照明の光がひっそりとこぼれます。光の陰影もインテリアの一部になる大人の空間。夜景を臨む都心のタワーマンションにぴったりな、モデルルームのインテリアです。
築28年のタワーマンションの一室をリノベーションしたモデルルーム。黒とグレーがベースのクールなインテリアのアイデア満載。日曜日は予約なしの自由見学会を開催中。
craft新宿モデルルーム
〈モデルルームのインテリア3〉ほどよくラフに、懐かしく
モデルルームのインテリア=生活感のない。というのもちょっと間違いです。モデルルームならそれでいいかもしれませんが、実際に暮らすとなるとどうしても生活感が出てしまうもの。読みかけの雑誌や、飲みかけのコーヒー、食べかけのドーナツ。それらをテーブルに置いていても、なぜだかステキに絵になってしまうモデルルームのインテリアがこちらです。
奥のスペースはリビング。ダイニングとはひとつながりで伸びやかさがありつつも、床と天井をダイニングよりも低めにし、まっ白な壁をくり抜いたようなこもった雰囲気に仕上げました。ダイニングで家族やゲストがしゃべっていても、本や音楽に集中できます。
左の壁は、グレーに白が入り交じる、表情豊かなモルタル塗りです。暖炉のマントルピースも、白いモルタルを塗りました。天井には框組のパネルを使用。ただし、クラシカルになりすぎないように框の溝を調整しました。なつかしさとリラックス感につつまれた、誰もがくつろげる空間になっています。
棚やマントルピースには、お好きな本や小物を置くだけで、インテリアがクールにキマります。「まわりにモノがあるほうが落ち着く」「小物を集めるのが好き」という方におすすめな、モデルルームのインテリアです。
懐かしさとモダンさが入り交じるモデルルーム。アンティーク煉瓦や人研ぎ、モルタルなど昔ながらの素材と工法がたのしめる。日曜日は予約なしの自由見学会を開催中。
craft自由ヶ丘モデルルーム
モデルルームのインテリアのこんな技にも注目!
リビングのカウンターは、なんと3役!
限られた空間を、いかに美しく、しかも機能的にするか。これが追求されているのが、よい住まいです。
たとえば、こちら。リビングの壁一面に、長いカウンターが設置されています。ここにTVを置いたり、絵画や花を飾ったりするためのカウンターですが、長手方向を強調し、奥行きを感じさせる効果も。さらに、正面の段差に座ってデスクとしても使えます。座ったときに、ちょうどリビングで座っている人と目線の高さが一緒になり、会話がしやすい。これも、ちょっとしたこだわりです。
モデルルームには美しさと機能性、心地よさと使いやすさの両方をもたらすための工夫が、たくさん施されています。歩き回ったり座ったりして、じっくりと観察してみましょう。
視線を奥へ奥へと導く、オレンジの壁
廊下の向こうにちらりと見える、オレンジの壁。
「あの壁の先には何があるの?」
と聞く前に、どんどん先に歩いて行っちゃいそうですね。好奇心でわくわくしながら、奥へ奥へと進んでしまいます。こちらのモデルルームは、決して広いわけではありません。しかし、このような壁をつくることで、視線が奥へと導かれ、実際以上の奥行きを感じることができるのです。
よいモデルルームは、このように視覚効果を考えながらプランニングされています。もしみなさんがモデルルームを訪れて、実際の面積よりも広く感じたとしたら、こうした工夫があるのだと思います。
まとめ
今回ご紹介したモデルルームのインテリアは、ごくごく一部です。
一口にモデルルームと言っても、デザインテイストはさまざまです。たとえば、マンションデベロッパーやリノベーション会社のモデルルームを見てみると、モダンだったり、アメリカンヴィンテージだったり、ナチュラルだったり。会社ごとに、あるいはモデルルームごとにデザインが違っています。
まずは、インターネットや雑誌などで、理想となるモデルルームのインテリアを探しましょう。
そのうえで、実際に見学に行くなどして
・素材
・配色
・居心地
・工夫(伸びやかさ、使いやすさ)
をじっくりと観察し、「これだ!」と思ったモデルルームのインテリアを参考にしたらよいのではないでしょうか。きっと素敵なモデルルームのインテリアになるはずです。
もし、これからリノベーションをする場合は、リノベーション会社に理想のモデルルームを伝えればOKです。ご希望のテイストで家具や照明をコーディネートしてくれるリノベーション会社もあるので、問い合わせてみるとよいでしょう。