「造作家具」(ぞうさくかぐ)という言葉を聞いたことはありませんか?
造作とは、作り付けの家具のこと。リノベーションの打合せでもよく使われる言葉なので、覚えておくと便利です。
ちょっとまぎらわしいのが「家具工事」(かぐこうじ)。どちらも作り付けの家具なので、造作家具と混同しがちです。造作家具と家具工事。どこがどう違って、どちらが住まいになじむのでしょうか。
これから、造作家具の特徴とリノベーションの施工事例をご紹介します。
造作家具とは?オーダー家具との違いは?
造作家具とは、大工さんが現場でつくる家具のこと。
柱と柱の間、梁下の高さなど、スペースに合わせたジャストサイズの家具をつくることができます。デザインも素材も思いのまま、100%オリジナルです。「知り合いから譲ってもらった足場を使いたい」なんてリクエストにも対応できます。
造作家具とオーダー家具(家具工事)との違い
ここでちょっと気になるのが造作家具と家具工事の違い。
プランニングのときに、「家具工事と造作家具ってどこがちがうんだっけ(…今さら聞けない)」という方もいるでしょう。わかりやすく区別すると、つぎの通りです。
〈造作家具〉
・大工さんが現場でイチからつくる
・リノベーション工事と同じ大工さんがつくるため、家具工事より低コスト
・シンプルなデザインと構造の家具向き(例:オープン棚)
〈オーダー家具(家具工事)〉
・家具屋さんが工場でつくったパーツを現場で組み立る
・家具屋さんが施工するため、造作家具よりコスト高
・複雑なデザインと構造の家具向き(例:扉のある棚)
そのため「全部、家具工事にしたい!」となると、かなりのコストになってしまいます。リノベーションでは、造作家具と家具工事を使い分けることが多いです。
造作家具はデッドスペースがなくなるなどメリットが多い!
造作家具は、現場でサイズを微調整しながらスペースにぴったりと合わせることができます。デッドスペースをつくりません。つまり、スペースが限られているマンションにピッタリです。
たとえば、今人気のリビングデスク。リビングやダイニングのちょっとしたスペースに造作する方も少なくありません。デスク周りをL字の壁で囲めば、こもったように。家族がいても集中することができます。
正面の壁は、無垢の羽目板張り。ダイニングと同じ空間にありながら視覚的にゾーニング。使い勝手も考慮し、左右にはオープンの本棚を設けました。家事の合間でも、読書や調べものに集中できそうです。
無垢の素材やデザインにこだわった上質な造作家具は、インテリアの主役になります。
リノベーションで造作家具をつくった3つの実例
〈1〉造作でシェルフを設けた事例
造作家具のなかでも、とくに人気のテレビボード。柱や梁の凹凸に整然と納まる様子は、見ていて気持ちがいいです。DVDデッキやスピーカーを置くスペースも考慮して設計します。
こちらは、リノベーションの際にテレビボードを造作した実例です。テレビボードとオープン棚をつなげたことで、リビング空間に統一性が生まれました。棚に飾るものは、陶芸作家である奥さまの作品の数々。器との相性や、空間に対する全体のバランス・ボリュームを考えながら樹種を選び、設計しています。
天井からカウンターへ下りてくる支柱は、飛行機の羽のような曲線に。無垢の木の質感がダイレクトに伝わるシンプルな造作家具が、より印象を深めています。
〈2〉造作でキッチンカウンターを設けた事例
造作家具ではキッチンカウンターをつくることもできます。造作家具の特徴は、細かな寸法を指定できること。お子さまも使えるよう低めにしたり、お気に入りの椅子の高さに合わせたり。空間の広さ・お好みの高さ・素材により、ジャストサイズのキッチンカウンターが誕生します。
こちらのキッチンは、手元が見えないように高めの腰壁を造作。モルタル塗りで表面を滑らかに仕上げつつ、ムラを残してあたたかな表情やぬくもりを演出しました。
「ダイニングテーブルは置かないつもり」ということから、食事をするのにちょうどよい高さ・奥行きのカウンターを造作したこともポイント。重厚なヨーロピアンオークと黒皮鉄を使い、どっしりとした無骨な印象に仕上げています。構造上動かせない柱はナラの化粧柱に替え、エイジング塗装を施し、カウンターの支えとして活用しました。
〈3〉造作でマントルピースを設けた事例
人気のバイオエタノール暖炉。このときこだわりたいのが、マントルピースのデザイン。
煙突も配管も必要ないエタノール暖炉は、デザインもサイズも自由です。伝統的な暖炉もいいけれど、モダンなインテリアにあわせるのもおすすめです。タイルでもガラスでも、壁の中に埋め込んでもOKです。
こちらの暖炉も造作で仕上げています。大きな白い箱が浮いているようなデザイン。壁のグレーのモルタルと、暖炉の白いモルタルの対比がモダンな印象です。
インテリアに合わせたオリジナルの暖炉は、愛着もひとしおです。造作家具でつくってみてはいかがでしょう。
まとめ
造作家具についてご紹介しましたが、いかがでしょうか。
造作家具は、オーダー家具(家具工事)と間違われがちです。どちらも空間のスペースとデザインに合わせてつくる作り付けの家具という点では同じですが、造作家具と家具工事は大きく違います。
〈施工方法〉
造作家具…現場で大工さんがつくる
オーダー家具(家具工事)…家具屋さんが工場でつくったパーツを現場で組み立てる
〈コスト〉
造作家具<オーダー家具(家具工事)
※造作でもこだわりすぎると家具工事よりも高くなるケースが
〈できること〉
造作家具…オープン棚やデスクなど、シンプルなデザインや構造の家具
オーダー家具(家具工事)…引き出しのある棚など、特殊なデザインや構造の家具
造作家具も家具工事もインテリアとスペースにあわせてつくるため、住まいにフィットします。
しかし、造作家具はコストを抑えられるけれど、オープン棚やテレビボードといった単純な構造のものが中心。家具工事はこだわりを追求できるけれど、コストが高い。というわけで、ご希望と予算に合わせて〈造作家具〉と〈家具工事〉を使い分けるのがよさそうです。
クラフトでは、ご予算やご希望のデザインにあわせて造作家具と家具工事を使い分けています。リノベーションと併せて作り付けの家具をご希望の方は、ぜひご相談ください。
リノベーションと併せて、造作家具や家具工事も承っています。インテリアとスペースにフィットする美しい家具をつくってみませんか?