住宅や店舗の内装で、モルタル仕上げを見ることがあります。しかし、それほど多くはありません。
その理由は、モルタルは左官のため、クロスや塗装と比べてコストと工期がかかること。さらにクラック(割れ)が生じてクレームに発展しやすいこと。こうしたことを大らかに受け入れることができれば、モルタル仕上げのメリットはとても大きなものです。
今回は、無機質なのに豊かさとぬくもりを演出する〈モルタル仕上げ〉のお話です。
モルタル仕上げにしかない最大の魅力とは?
”モルタル仕上げでしか出せない表情”があることを知ってほしい
あらゆる形の壁に合わせて、シームレスに仕上げる。
モルタルの厚みやコテむらで、空間に表情をつくる。
職人さんの手しごとの名残りを伝える。
たとえば、リビングの壁をモルタル仕上げにしたとします。石や木の壁ほど主張することはありません。しかし、光が当たるとコテむらが浮かび、やわらかな表情に。空間に溶け込みながらも、強いインパクトと暮らす人のこだわりを感じさせてくれるのがモルタル仕上げなのです。
ただし、モルタルはクラックが入るし,汚れやすく、水にも弱い。またコストと工期がかかります。こうしたことを『経年変化の味わい』と受け止められる人だけが、モルタル仕上げの魅力を享受できるのではないでしょうか。
1_モルタル仕上げの壁
ランダムなコテむらが残り、奥行き・豊かさ・ぬくもりが
クラフトの〈自由が丘モデルルーム〉では、随所にモルタル仕上げを見ることができます。
たとえばこちらのリビングルーム。暖炉のマントルピースは白いモルタル。その背面の壁は、黒いモルタルに白いモルタルを重ねています。松煙という天然着色料の深い黒に白が混じって、クールなグレーに。ただし、一辺倒なグレーではありません。モルタルの厚みとコテの抑え方、ならし方にこだわって、奥行き・豊かさ・ぬくもりを表現しています。
コーナーは大きな曲線を描かせて、モルタルの素材感を強調。左官仕上げだからこそ、暮らす人の好みによってイメージ通りの風合いをつくることができるのです。
亜麻色のモルタルに白いモルタルを重ね、より淡くやわらかなイメージに
キッチンのカウンター側の壁もモルタル仕上げです。こちらは亜麻色のモルタルに白いモルタルを重ね、より淡くやわらかなイメージに。窓から注ぐ光が当たると、ふわりとコテむらが現れます。
クールさ、優しさ、やわらかさ、いかようにも
キッチンの壁~ぐるりとまわってバスルームまで、モルタル仕上げの壁が続いています。
デザイナーと職人さんのセンスと腕があれば、クールさ、優しさ、やわらかさ、いかようにも演出できるモルタル。
リノベーションでモルタルを使用する際は、粋な感覚を持つ左官職人さんにお願いすることも実はとても大切です。
2_モルタル仕上げの床
クラックと塗りむらが、ヴィンテージ感をつくる
欧米のロフトアパートメントを思わせるインダストリアルな空間にリノベーションしました。
床は既存のカーペットを剥がし、モルタル仕上げに。滑らかさと艶やかさがありながらも、ところどころに現れたクラックと塗りむらが理想的なヴィンテージ感を演出しています。
天井の経年が激しいコンクリート躯体や、清潔に塗装した白い壁との対比もおもしろいですね。
3_モルタル仕上げのキッチン
さまざまなテクスチャーと調和しつつも、静かに存在を主張
西海岸インテリアにリノベーションしたお住まい。オープンキッチンの手元を隠すために立ち上げた腰壁は、モルタル仕上げとしました。滑らかに仕上げつつ、ほのかに浮かぶコテむらがラフでやさしい印象です。
黒皮鉄や古材、塗装などさまざまなテクスチャーと調和しつつも、静かにその存在を主張するのがモルタルの魅力ではないでしょうか。毎日見ていても飽きず、かえって親しみがわいてきます。
4_モルタル仕上げの玄関(土間)
クラックや塗りむらがラフな雰囲気を演出
もともと狭くてお悩みだった玄関。リノベーションでスペースを広げ、モルタルで仕上げました。さらに納戸兼書斎までモルタルの土間を連続させ、伸びやかなイメージに。クラックや塗りむらがラフな雰囲気を演出しています。
ゆったりとした土間スペースがあるため、自転車やベビーカーを家の中にしまったり、ビジネスパートナーを靴のままで書斎に招き入れることもできそうです。
まとめ
モルタル仕上げの魅力についてお話ししましたが、いかがでしょうか。
モルタルはクロスやタイルと違って工期がかかるし、汚れやすいといったマイナス面もあります。それでも、コテむらのやわらかい表情、職人さんの手仕事の名残り、じわじわと浮かび上がる経年変化…。写真ではわかりづらいかもしれませんが、無骨な見た目からは想像できないほどの、やさしい質感を感じることができます。
玄関の土間、リビングの壁や天井、キッチンの腰壁など。ラフでクールな雰囲気がお好きな方は、部分的にモルタルを取り入れてみてはいかがでしょう。
冷たくなりすぎることなく、かといって無機質すぎることもなく。空間に奥行きのある表情をプラスしてくれるはずです。
※〈モールテックス左官仕上げ、美しさに迫る〉の記事もあわせてご覧ください。
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