クラフトを支える大工さん「段取り8割のスピリット」 | リノベーションスープ

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クラフトを支える大工さん「段取り8割のスピリット」

クラフトを支える職人さんを紹介するシリーズ。第2回目は、「とにかく仕事が丁寧で早い」とクラフトの現場監督の間でも評判が高い、大工の寺田新(てらだあらた)さん。その裏には、修業時代に叩き込まれた「仕事は段取りが8割」という教えがあるようです。

一秒たりともムダにしたくないから

工事現場での寺田さんの動きには、一切ムダがありません。

移動するときは小走りで、止まっている時間はほとんどなし。たまにつぶやきが聞こえてくるのは、考え事をしているから。そんなときも身体を休めることなく動き回ります。あと数分で日が暮れてしまうとでもいうように。

まだまだ寒い冬の日のこと。しかし寺田さんを見上げると、額にうっすらと汗をかいていました。

「寺田さんはすごく仕事が丁寧だし早い。それに『ここはこうしたほうがいいんじゃないか』と提案してくれるから助かる」と話すのは、クラフトの現場監督。

他の人と同じことをやったって、つまらないと思うんですよ

動きは早いけれど、とても丁寧。木材の端を合わせては削ることを、納得いくまで繰り返します。

「僕たちがやってる仕事は、仕上げをしたら見えない場所なんですよ。でもキレイだと気持ちがいいじゃないですか。気持ちのうえで自分の仕事の美しさにこだわりたい。誰かに『こうしろ』と言われたわけじゃないけど、他の人と同じことをやったってつまらないと思うんです」

と教えてくれました。その間にも手を止める気配はありません。

機械があると効率が上がる。僕の手みたいなものですね

あまりにも忙しそうな寺田さんを前に話しかけることを躊躇していると、こちらの気持ちを読んだように話し出しかけてくれました。

「前に一度、機械を全部盗まれちゃったんですよ(笑)。すぐに買い直したから、僕の道具はほとんど新品。べつに道具があれば機械がなくたって仕事はできますよ。昔はそうやっていたわけですしね。でも機械があると効率が上がるし、工期の短縮につながる。僕の手みたいなものですかね」

そんな寺田さんの”手の変わりの機械”は、なんと軽トラック一台分。

重そうな腰袋には、カナヅチや電動ドリル、丸ノコ、計算機、スケール。どの道具もすぐに取り出し、時間のムダなく作業を進めるための、大工さんのマストアイテムです。

事前に2日かけて、図面をしっかりと読み込んでおきます

先ほどから少し気になっていたのは、寺田さんが図面をまったく見ていないこと。片隅に置かれた寺田さんの図面を見ると、几帳面にタグが付けられ、いろいろなペンでびっしりと書き込みされていました。

「ああ、図面は事前に読み込んでるんですよ。全部覚えているわけじゃないけど、工事の前に2日くらいかけてじっくり読みこんで、作業しているところをイメージする。そこで『ここはこうしたほうがキレイに納まる』なんて思ったら、クラフトの監督や設計担当に話してみるんです。それだけでずいぶん時間のロスがなくなりますからね」

『止まっている時間をなくすこと』が時短につながるんです

18歳からこの世界に入ったという寺田さん。昔からものづくりが好きで、中学生の頃にはすでに「将来は大工になる」と公言していたそうです。10年間の修行の中で学んだのが、”大工の仕事は段取りが8割”ということ。もちろん誰も言葉で『こうやるんだよ』なんて教えてくれないのが職人さんの世界。師匠の仕事ぶりから、寺田さんなりに大工の心粋のようなものを感じとったそうです。

「切ったり測ったりという作業スピードは変えられない。そうすると『止まっている時間をなくすこと』が時短につながるんですよ。作業を止めなければ時間のクリアランス生まれるから、仮にトラブルが起きても解決する時間があるんですよね」と寺田さん。

現場では、予期せぬ作業が出てくることもあります。それを難なくこなすために、余白の時間をつくっておくのが寺田さんのやり方です。

僕が『できない』というのは、自分の力不足でしかない

「なぜそんなに一生懸命になれるんですか?」と聞いてみました。

「クラフトの図面を見ると、設計者が線一本を引くのにものすごく考えているのがわかる。それは設計者が『実現できる』と判断したから描いたんだと思います。もちろん物理的にできないこともありますが、それ以外で僕が『できない』というのは、力不足でしかない。だから、どうにかして叶えよう、叶えたいって思うんです」

はじめてクラフトの仕事を請け負ったとき「デザインがすごく新鮮で、刺激を受けた」という寺田さん。ものづくりが好きで好きで仕方がない。休みの日に、自身が担当した現場を見に行くこともあるそうです。

「遊びも仕事も一生懸命な人が好きです。無条件で応援したくなりますね」

*職人さんシリーズバックナンバー*
〈クラフトを支えるタイル屋さん「繊細に、ときに大胆に」〉

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