グレーのインテリアが人気です。もはやインテリアのベースカラーは、ベージュからグレーに変わりつつあるようです。
実感がない?
そういえば、先日、電車の中で30代の女性2人が次のような会話をしていました。
「グレーのインテリアってかっこいいよね」
「たしかに。最近雑誌とかでも見るよね。NYとかでも流行ってるらしいよ」
「デザイナーとかがやるんじゃない?」
「だよね。一般人にはむりむり」
つまり、グレーのインテリアはかっこいい→自宅でやるイメージができない→とりあえず現状維持。この会話から想像するに、グレーのインテリアは「ハードルが高い」と考える人が多いようです。
もったいない。2人の会話を聞きながらそう思いました。グレーはどんな色とも相性がいいので、インテリアに取り入れるることは、それほどむずかしくはありません。ただし、グレーは彩度や色合いによってイメージが異なります。理想のテイストに合わせて、ライトなグレー、ダークなグレー、どのグレーをベースカラーにするかを決めましょう。
今回は、リノベーションで実現できるグレーのインテリアのつくり方をご紹介します。
1.上品で落ち着いたグレーベージュのインテリア
シックでモダン。なのに、ふわりとあたたかさを演出するグレーのインテリアです。
ベースとなる色は、グレーとベージュの中間色のグレーベージュ。
グレーベージュのイメージは
・おだやか、やわらかい
・あたたかい
・都会的で上品
といったもの。「ベージュのやわらかな雰囲気も好き」という方は、このようなグレーベージュのインテリアからはじめてみてはいかがでしょう。子供からご年配の方まで心地よく感じるカラーです。
さて、こちらはグレーベージュでまとめたインテリアの実例です。キッチンやカウンター収納の扉もグレーベージュ。床もグレイッシュな色調のフローリングを張り、上品にまとめました。
ただし、これだけではインパクトに欠けます。「あら、上品にまとめましたね」という感じがしてしょうがない。せっかくリノベーションするなら、もっと遊んでみてもよいでしょう。海外のインテリアのように、グレーに赤や黄色のアクセントカラーを取り入れるのもアリですが。そうすると、インパクトが強すぎて、今度は上品な雰囲気が損なわれてしまいます。むずかしいところです。
そこで、正面の壁に特殊塗装を施すことにしました。ややメタリックな質感。ふんわりと上品な空間のアクセントとなっています。さらに光が当たると、グレー地にベージュがふわりと浮かび、今度はやさしい雰囲気に。なんとも言えない表情の壁で、空間を彩るクールなアクセントに。全体のトーンを守りながら、オリジナリティを出すのにおすすめな方法です。
2.ラグジュアリーなダークグレーのインテリア
重厚なインパクト。かつ大胆なゴージャス感を与えてくれるグレーのインテリア。
ほとんど黒に近いダークグレーです。
ダークグレーのイメージは
・重厚なイメージ
・知的でクール
・高級感がある
といったもの。モードな雰囲気が欲しい、人と違うインテリアにしたい、海外インテリアの雰囲気が好き。こういった意識の高い系の人たちが、ダークグレーのインテリアを好む傾向にあるようです。
しかし、住まいに重厚なダークグレーを取り入れるのは、わりとハードルが高いです。なんとなく日本って「壁が白くて明るくて」「控えめでナチュラル」「あたりさわりない」という住まいがまだまだ主流ですし。新築マンションや建売り戸建ても、白ベースの空間がほとんど。白信仰がうかがえます。
しかし遊び心のないリノベーションなんて、ピーナッツの入っていない柿の種のようなもの。ピーナッツというアクセントがあってはじめて、柿の種のうまみが引き立つのです。
それでもまだまだ躊躇している方、ご安心ください。組み合わせる色によって、グレーのイメージを調整することができるのです。
こちらは壁をダークグレー、床と天井は白でまとめています。白で抜け感をつくり、ダークグレーにより重くなりすぎることを防いでいます。コントラストが際立つモダンなインテリアが誕生しました。
もうひとつ注目したいのは、グレーに組み合わせた素材です。
ダイニングテーブルの上に並ぶペンダントライトは真鍮。またテーブルやドア、キッチンはクルミ(ウォールナット)を使っています。重厚でクラシカルなイメージと、ゆたかな木目の表情と、あたたかな色合い。これらによってダークグレーが中和され、くつろげる空気感が生まれています。
ポイントは、色と素材の組み合わせ。ラグジュアリーかつリラックスできる、グレーのインテリアに仕上がりました。
3.ライトグレーで味わいのあるインテリア
履き古したデニムのようなヴィンテージの味わいのある、ライトグレーのインテリアです。
ライトグレーというと、
・無機質
・クール
・控えめで目立たない
といったイメージがありますね。ここで注意したいのが、ライトグレーは他のグレーに比べて印象が薄いこと。うまく使わないとぼやっとしていて「なんか野暮ったくない?」と言われてしまいます。ライトグレーをインテリアに取り入れるときは、ちょっとしたコツが工夫が必要なのです。
こちらのお住まいは、壁をグレーに塗装。わざと刷毛跡や塗りムラを残しながら塗りました。窓から注ぐ光が当たると、それらが幻想的に浮かび上がります。クロスだとのっぺりとした印象。塗装なら塗り方で表情をつくることができるのがメリットです。
メゾネットの上下をつなぐのは、スケルトンの鉄骨階段。味わいのあるグレーの壁に合わせ、黒皮鉄で仕上げました。黒皮鉄は鉄の素地のまま。成形時の傷・ムラがはっきりと刻まれ、趣きあるグレーの壁と不思議なくらいマッチします。
モダンだけど、古き良き時代の趣を感じるインテリア。控えめなライトグレーの壁で、こうした味わいのあるインテリアをつくってみませんか?
4.グレーのグラデーションでプロ級インテリア
最後に、グレーのグラデーションのインテリアをご紹介します。
グラデーションには、どのようなイメージがあると思いますか?
・奥行き、表情がある
・モダン
・洗練されている
グレーは単色だとモダンなイメージですが、グラデーションにすると、〈奥行き〉や〈洗練さ〉が加わります。プロレベルのインテリアです。グレーの濃淡が重なる空間には、どこかに導かれるような心地よさがただよいます。
たとえば、こちらのインテリア。
壁やクローゼットでグレーのグラデーションをつくることで、シルエットを際出せています。縦横のラインを強調し、端正なイメージ。そこにタイル、大理石、火山石など上質な素材を組み合わせたこともポイントです。ややもすると無骨な雰囲気になってしまうクールな空間に、メリハリが生まれました。
もうひとつ注目したいのは、無垢のフローリングを組み合わせたこと。
床はあえてハズします。ダイニングの一部の床には明るいナラのフローリングを張りました。ダイニングテーブルやイスも、ナラを使用。ただクールなだけでなく、暮らしに欠かせない”ぬくもり”をプラスしました。ただ「かっこいい」だけの空間では、リラックスできませんから。
まとめ
4種類のグレーのインテリア実例をご紹介しました。グレーにはさまざまなグレーがあります。どのグレーを基本の色にするかによって、インテリアのイメージが変わることをおわかりいただけたと思います。
グレーベージュのインテリア…上品、あたたかい
ダークグレーのインテリア…重厚・ラグジュアリー
ライトグレーのインテリア…モダン・クール
グレーのグラデーションのインテリア…奥行き・表情
組み合わせる素材で全体のバランスをとることも大切です。
先述したように、住まいは〈暮らす場所〉であって、お店ではありません。クールなグレーで決めても、心からリラックスできなければよい住まいとは言えないでしょう。
暮らしやすさに欠かせない”ぬくもり”を意識しながら、色や塗装方法、組み合わせる素材を選ぶ。これらを意識しながらグレーのインテリアをたのしんでみましょう。
マンションや一戸建て、二世帯住宅やビルなど、建物別にリフォームデザイン実例を掲載しています。大胆な間取り・デザイン変更で、新築以上の価値ある住まいに。
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