ご自宅に〈障子〉はありますか?
家に和室がない、破れや汚れが気になるといった理由から、障子のあるお住まいが減りつつあるように感じます。しかし、やわらかな光を空間に拡散する障子はとても情緒があるものです。
今回は、インテリアに障子が溶け込むリノベーション事例をご紹介します。
光を拡散・視線を遮る・断熱...高性能な障子
「明かりとり」としての役割がある障子。「明障子」として、平安時代後期に広まったそうです。まだ電気が普及していなかった時代、日本家屋の陰翳美をつくる一翼を担っていました。
今はなきホテルオークラ本館のロビーにも、障子が取り入れられていました。ぼんやりと淡い光で包まれたロビーは、ため息が出るほど雅やか。オークラの顔とも言える、気品ある空間でした。
障子の魅力をまとめると
・淡い光を拡散させる
・視線を遮ぎりつつ、光を透す
・家具や小物を引き立てる
・組子のデザインでイメージを変えることができる
・開けたり閉めたりがやさしい
・断熱効果
さまざまな効果がありますね。これらをインテリアにどう取り入れるかがポイントになってきます。
〈障子のあるインテリア1〉すがすがしい和の趣
すがすがしさ感じる和モダンのリビング・ダイニング。窓の外には、手入れの行き届いた坪庭が広がります。
この景色を活かすため、リノベーションではリビングとダイニングの窓を拡大。開口部には雪見障子を設けています。雪見障子の下部の小さな障子を擦り上げると、通行人の視線を気にせず、窓の外の景色を眺めることができるようになりました。
障子を完全に閉めるとぼんやりと優しい明かりが広がり、擦り上げるとみずみずしい緑が目にあざやか。和の空間にやわらかな光を注ぎ、坪庭を美しく切り取ります。
〈障子のあるインテリア2〉和と洋が調和する
「障子は和室じゃなければ」というルールはありません。設計する人、住まう人のアイデア次第です。
こちらは、都心の一戸建て。ステキなお庭があったものの、隣のマンションからの視線が気になり、カーテンを開けることができませんでした。そこで、視線をさえぎりながら緑ゆたかな庭の眺めをたのしめるよう、リビングに障子を採用。自然光が障子を透して広がり、リビング・ダイニングをすっぽりとやわらかな光で包みます。
清々しい竹のフローリングと、奥ゆかしい雪見障子。和と洋が美しく調和するインテリアに生まれ変わりました。
〈障子のあるインテリア3〉古民家風な無骨さを
ロフトスペースはご主人さまの書斎を兼ねたゲストルーム。
「落ち着いてお酒を飲みたい」というご要望から、古民家のような趣に。そのファクターとして重要な役割を担っているのが、障子です。黒い障子の枠のどっしりとした佇まいが、和の重厚な印象をもたらしています。
障子を行灯のように活用したことも大きなポイントです。壁面収納の扉を障子とし、内側に照明を入れました。やわらかい光が障子からこぼれる様子は、ちょっと贅沢な雰囲気ですね。これから猫を飼うということから、猫が引っ掻いてもやぶれにくい『ワーロンシート』を採用しています。
ぼんやりと幻想的な光に包まれていただくお酒は、ひときわ美味しく感じられそうです。
まとめ
障子のあるインテリアの魅力をご紹介しましたが、いかがでしょうか。
視線を遮りながら、淡い光で空間を包み込む障子。開け閉てするときは、障子特有の軽やかさがあります。和室でなくてももちろんOK。床材や家具などインテリアを工夫すれば、和室だけでなく洋室にも溶け込みます。
情緒的な雰囲気で空間を包み込む障子なら、きっと心も和ませてくれるはずです。これからリノベーションする方は、取り入れてみてはいかがでしょうか。