断熱性がある家ととない家では、室内のあたたかさはまったく違います。リビングが広かったり、吹き抜けがあったりすると、室内があたたまりにくくなるため、ますます必要です。
しかしごく稀に、断熱材が入っていない住まいがあります。入っていても古くて劣化していたり、部分的に入っていなかったり。古いマンションでもありえるので、リフォームの際にはしっかりとチェックしておきましょう。
(作成日 2017.9.27 /更新日2023.12.12)
断熱性能が高い家は、なにが違うの?
断熱性能には、どのような役割があるかご存知ですか?
断熱性能が高い住まいは、言ってみればユニクロのヒートテックを着ているようなもの。ヒートテックを着ると、身体が冷気に触れず、体温で保温されますよね。住まいもこれと同じ原理です。
窓ガラスや外壁から外の冷たい空気も入りにくいし、中のあたたかな空気も逃しにくい。エアコンやヒーターが効きやすく、省エネで経済的です。
内張り断熱と外張り断熱
断熱工事には、〈内張り断熱〉か〈外張り断熱〉のどちらかの工法を採用します。
この2つは、わかりやすく言うと「コートを羽織るか、ヒートテックを着るか」の違いです。リフォームでは、工期もコストも低い〈内張り断熱(充填断熱)〉のほうが多く採用されています。
●内張り断熱
柱と柱、あるいは柱と間柱の隙間に断熱材を入れ込む断熱方法です。外張り断熱に比べてコストを抑えられ、なおかつ外壁の厚みが増してしまうことがないというメリットがあります。ただし、コンクリート造や木造など住宅の構造によって断熱性に差が出やすく、外張り断熱と比較して気密性が低くなってしまう点は内張り断熱ならではのデメリットです。
●外張り断熱
住宅の内側ではなく外側に断熱層を設ける断熱方法です。外壁材の内側に断熱材を設置します。結露が発生しにくい点や気密性の高さは、外張り断熱ならではのメリットだと言えるでしょう。ただ、内張り断熱に比べると工事費が高くなりますし、外壁の厚みが増すというデメリットがあります。また、断熱材の上から外壁材を設置するため、地震が発生したときなどに不安定になってしまいがちという弱みもあります。
断熱リフォームの方法はどんなものがある?
〈断熱リフォーム1〉 床・壁・天井に断熱材を入れる
断熱リフォームでまずやることは、床・壁・天井の断熱材の充填です。古い物件は断熱材が劣化していたり、ひどい場合は断熱材が入ってなかったりします。リフォーム前の現地調査の際に、そうしたこともチェックします。
断熱リフォームで注意したいのは、オーバースペックになっていないかどうか。あまり気合いを入れて断熱しても、北海道ほど寒くない東京ではムダになってしまいます。そのあたりをきちんと理解したうえで、土地柄にぴったりの断熱工事を行いましょう。
〈断熱リフォーム2〉 窓に断熱ガラスを入れる
断熱リフォームで大きなポイントとなるのが、窓です。ガラスは壁や屋根よりも断熱性能が低く、室内の熱損失も大きい。いくら断熱材を入れていても、窓が大きければ大きいほどガラスから冷気が入ってきてしまいます。この場合は、高性能なガラスに交換するのがおすすめです。
たとえば、ガラスとガラスの間に高断熱のガスを閉じ込めている〈ペアガラス〉。また、ガラスとガラスの間に空気層を閉じ込め、室内側のガラスを金属膜でコーティングしている〈Low-E複層ガラス〉。どちらも断熱性能が高く、窓からあたたかい空気が逃げるのを防ぎます。
アタッチメント付きの断熱ガラスなら、既存のサッシにそのまま取り付けることができるため工事も簡単。断熱材を入れるよりも手軽に断熱性能をアップできます。「今年の冬に向けて急いで断熱したい」という方は、ひとまず断熱ガラスに替えてみましょう。
もちろん、インナーサッシ(二重窓)も有効です。
断熱リフォームの費用はどのくらい?
断熱リフォームの費用の目安(戸建て)
同じ断熱リフォームでも、木造戸建てとマンションでは方法が異なります。
戸建ての断熱リフォームでは、グラスウールを充填していきます。グラスウールはガラスの繊維で、あたたかい空気の層をつくってくれます。
床はグラスウールのボード状の断熱材を根太の間に固定。壁や天井は、断熱材が入った袋を柱や梁の間に、隙間なく敷き詰めていきます。費用はマンションやRCのビルよりも割安です。
●〈木造戸建て断熱リフォームの費用〉
約2,800円/㎡当たり
(グラスウールを充填・解体費用・仕上げ費用を除く)
断熱リフォームの費用の目安(マンション)
マンションの断熱リフォームでは、発砲ウレタンを吹き付けていきます。
車にウレタンの入ったドラム缶を搭載し、ホースを部屋まで伸ばします。ホースは長いため10階くらまでは対応可能。専用のガンで、コンクリート躯体に直接吹き付けていきます。発電機を使用するため工事が大掛かりで、木造の戸建てより割高です。
また、断熱面積によっても単価はかなり変わってきます。
●〈マンション断熱リフォームの費用〉※断熱面積60〜100㎡程度の場合
¥420,000~/一式
(発砲ウレタンを吹き付け・解体費用・仕上げ費用を除く)
と考えておきましょう。
スケルトンリフォームのタイミングであれば、床・壁・天井を壊したついでなので、単純に「断熱工事の費用が増える」と考えればOKです。しかし断熱リフォームだけしようとすると、壁を壊し、断熱材を充填し、さらに下地・クロスをつくる。結構な大仕事で費用がかかります。
断熱リフォームは、フルリフォームのタイミングで行うほうが経済的です。
断熱リフォームの補助金制度
住宅の断熱リフォームを行う際、活用できるのが「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」という補助金制度です。断熱材や窓を使って省エネ効果の向上が見込めるリフォームをすることで補助対象経費の3分の1が補助されます。
戸建てだと1住戸あたり120万円まで、集合住宅だと個別・全体に関わらず1住戸あたり15万円までと上限が決まってはいますが、断熱リフォームをするのであれば検討しても良いかもしれません。
申請の方法や申請場所などについては各自治体で異なります。「既存住宅における断熱リフォーム支援事業 〇〇(地域名)」などで検索し、申請方法や申請場所などについて確認してみてください。
断熱リフォームの注意点は、会社選び!
断熱リフォームの主な注意点は、以下の2つです。
・断熱リフォームの実績がある会社に依頼する
・補助金交付等停止措置や指名停止措置の対象となっている会社への依頼は避ける
リフォーム会社にはそれぞれ得意な分野と不得意な分野があるので、断熱リフォームを依頼する際は、なるべく断熱リフォームを得意としている会社にお願いするようにしましょう。
断熱は気密性が重要で、施工の不備によって気密性が失われてしまうと断熱効果が低下してしまう恐れがあります。そのため、断熱リフォームの実績がある業者に依頼することが重要になるわけです。断熱リフォームの実績は、各社のホームページに掲載されている事例で確認できます。
また、リフォーム会社の中には補助金交付等停止措置や指名停止措置の対象となっている企業があり、そうした会社に依頼してしまうと補助金を受給できません。リフォーム会社を選ぶ際は、そのことについてもしっかりと確認するようにしてください。
気密性アップでより高い断熱効果!
先ほど、断熱性能が高い住宅は「コートやセーターを着ているような状態」とお伝えしました。しかし、コートも襟元から冷気が入ってくるとぞくぞくしますよね。あたたかいけれど、やっぱり寒いような…。
そこで「ちょっとした隙間も塞いでしまおう」と考えたのが気密性です。断熱材の上からサランラップでぴったりと包むように、あらゆる隙間という隙間を塞いでしまいます。
気密性を高めることができれば、断熱性能は100%に近い効果を発揮してくれます。そういうわけで、断熱性能と気密性は切っても切れない関係。リフォームの際はこの2つをセットで考えましょう。
※ただし、断熱性能が高いと結露の原因に。24時間換気を心がけましょう。
まとめ
もともと日本の住まいは夏向き。冬よりも「夏をどう乗り切るか」ということを重視して住まいづくりが行われてきました。夏は風通しがよくて涼しいけれど、冬は寒いのです。
1989年公庫融資を受けるための条件に、断熱が義務化されたときも、世の中の断熱性能への意識は低く、「うーん。そうしないと融資できないんでしょ?」という感じでしぶしぶ導入したようです。ですから、当時建てられた住宅には壁と天井に断熱材が入っているのに、なぜか床には入っていなかったりすることも。「心地よさのため」ではなく、「公庫融資の条件をクリアするため」に断熱材を入れただけ、というケースもあります。
中途半端な断熱では、まったく効果がありません。床・壁・天井をしっかりと断熱してこそ断熱効果がでてきます。リフォームするなら、間取り変更やデザインの変更と併せて断熱性もアップしましょう。このほうが、将来あわてて断熱工事をするよりもはるかに経済的です。