リフォームやリノベーションを検討したことがあれば、「スケルトンリフォーム」という言葉を目にすることも多いのではないでしょうか。
ひとくちにリフォームといっても、住まいのごく一部だけに施す部分リフォームから、すべての居室に手を入れる大規模リフォームまで、その規模はさまざま。なかでも最も大掛かりなものがスケルトンリフォームで、住まいを新築同様に一新することができます。
スケルトンリフォームで何ができるのか、工事内容に制限はあるのか、工期や費用はどれくらいかかるのかを、マンションと一戸建てそれぞれの特徴を解説していきます。
スケルトンリフォームとは
スケルトンリフォームとは、建物の構造部分(梁・柱・構造壁等)のみを残し、住まいの内装や設備をできる限り解体・撤去してから実施するリフォームです。仕上げ材や建具はもちろんのこと、間取りの大きな変更も可能なため、新築住宅と同様に真新しい空間に生まれ変わらせることができます。
マンションのスケルトンリフォーム
築年数の古いマンションのなかには、解体してみたら壁や天井に断熱材が入っていなかったというケースも。リノベーション時にしっかりと断熱材を入れることで、冷暖房効率が良くなるだけでなく、結露やカビを防ぐ効果も期待できます。
マンションのスケルトンリフォームの注意点
マンションの構造は大きく「ラーメン構造」と「壁式構造」に分けることができます。ラーメン構造とは梁と柱で建物を支える工法で、室内をすっかりと解体することができるため、スケルトンリフォームがしやすいです。
一方、壁式構造とはその名の通り室内の壁で建物を支える工法。室内に梁や柱の出っ張りが少なく、すっきりとした空間が特徴です。壁式構造のマンションをスケルトンリフォームする場合、建物の強度に影響のない「間仕切り壁」は撤去できますが、構造の一部である「耐力壁」は解体することができません。
縦方向にパイプを通す「パイプシャフト」の位置や、換気扇の排気口の位置を変えることはできません。また、排水管の位置関係によっては、水回りの大幅な移動が難しいケースもあります。
マンションのスケルトンリフォームの範囲
マンションでリフォームできるのは専有部分のみとなり、共用部分にあたるバルコニー・玄関ドア・窓等には原則的に手を加えることはできません。
玄関ドア自体を交換できなくても、内側を塗装したりシートを貼ったりすることで雰囲気を変えることができます。窓も共用部分となりますが、室内側に内窓を追加して2重窓にすることが可能です。既存のサッシは基本的に交換不可ですが、劣化により不具合が生じている場合など、管理組合に相談をすれば、使用する素材や色等を指定の上で許可が降りるケースもあります。
そのほか、管理規約によりリフォーム後の床材が指定されているなど、施工内容に制限が定められているケースもあるため、事前に確認しましょう。
このようにマンションのスケルトンリフォームにはいくつかの制約があります。しかし、制限を感じさせないリフォームプランを提案できるかどうかが、設計士の腕の見せ所といえるはずです。
マンションのスケルトンリフォームの実例
ご夫婦でお住まいのマンションのスケルトンリフォーム事例です。おふたりの集めた書籍や絵画・アンティーク雑貨などを収納するスペースが不足しており、経年による内装の傷みも気になっていたそう。そこでマンションの大規模修繕工事に合わせ、スケルトンリフォームをすることに。
寝室以外の居室は、住まい全体がひとつづきとなるようプランニングしました。玄関そばの居室と廊下は、お持ちのコレクションをディスプレイするためのオープンなギャラリースペースに。
間仕切り壁の代わりにスチール枠のガラスを採用することで、開放感のある伸びやかな空間となっています。モノトーンを基調とした落ち着いた色合いにまとめたことで、ご愛用の名作家具が映える住まいになりました。
一戸建てのスケルトンリフォーム
一戸建ては専有部分・共用部分の区別がないため、マンションに比べてスケルトンリフォームの自由度は高く、大幅な間取りの変更も可能です。定められた建ぺい率・容積率の範囲内であれば、増築することもできます。
また、一戸建てのスケルトンリフォームは、建物の補強工事をする機会にもなります。補強工事の一例としては、基礎にコンクリートの打ち増しをする・柱や梁に耐震金具を取り付ける・耐震壁を追加する、といった方法があります。
再建築不可物件について
住宅を建てるための法の取り決めのひとつに「敷地が幅4m以上の道路に2m以上接している」という要件があります。現行の法律に適合していない建物を「既存不適格」といい、一度取り壊してしまうと新たに建てることはできません。
再建築不可物件の代表的なケースが、道路から奥まった敷地に細い(幅2m以下)路地でつながる「旗竿地」です。このような土地で住まいを一新したい場合は、必然的にスケルトンリフォームを選択することになります。
一戸建てのスケルトンリフォームの注意点
一戸建ては木造住宅が多く、一見きれいでも内部で劣化が進行しており、解体作業により初めて判明するケースもあります。補修・補強工事が必要な場合、想定外の費用が掛かり工期も伸びますし、劣化状況によっては総費用が建て替え(新築)よりも高くなってしまう可能性も。
そのような自体を防ぐためには、「ホームインスペクション(住宅診断)」の利用がおすすめです。第三者的な立場の専門家が、建物の劣化状況、手抜き工事の有無、耐震性能、補強工事の必要性やその場合にかかる費用の目安等を診断してくれます。中古住宅の購入を検討しているなら、契約前に利用すると安心です。
一戸建てのスケルトンリフォームは自由度が高いですが、防火地域・準防火地域の場合は、開口部(窓や扉)には一定の耐火性能を満たした建材を使用しなければいけません。都市部の住宅地はほとんどが防火あるいは準防火地域に指定されており、火事が発生した際の延焼の防止を目的としています。
一戸建てのスケルトンリフォームの実例
ハウスメーカーのツーバイフォー(2×4)住宅を、お母さまとの同居を機会にスケルトンリフォームした事例です。壁の撤去に制約があることから「リフォームが難しい」と言われがちなツーバイフォー工法ですが、入念な構造計算にもとづき梁を補強することで、建物の強度を保ちながら間取りの変更を叶えています。
既存の住まいは、広さはあるものの収納が少なめで、使われていない和室もありました。そこで、和室だった場所にキッチンを移動することでLDKを拡大し、家族5人とペットの猫がのびのび過ごせる広々とした空間に。
各居室に使い勝手にこだわった壁面収納や納戸を設置したことで、いつも片付けやすい住まいになりました。ご主人さまがお持ちのたくさんの書籍を収められるよう、階段横の壁に図書館のような大きい本棚を設け、吹き抜けの一部を塞いで書斎スペースを新設しています。
スケルトンリフォームの費用相場
スケルトンリフォームをする場合の、平米あたり単価の費用目安は下記のとおりです。
・マンション:23万円前後/平米
・一戸建て(木造):24万円前後/平米
・一戸建て(鉄骨・RC造):28万円前後/平米
使用する内装材や設備のグレード、補強工事の有無などによって費用は大きく変わってくるため、あくまでも目安として参考になさってください。
リフォーム代以外にかかる費用
工事以外の費用が掛かることもあります。スケルトンリフォームは大規模な工事となるため、住みながら作業を進めることはできません。既に住んでいる家をスケルトンリフォームする場合は、工事が終わるまで仮住まいをする必要があります。そのため、工事費用のほか往復の引越し費用と仮住まいの家賃が必要です。仮住まいに入り切らない家具や持ち物を貸し倉庫に預ける場合も、レンタル費用が発生します。
スケルトンリフォームの工期
スケルトンリフォームの工期は床面積や施工内容により異なりますが、大まかな目安は下記のとおりです。
・打ち合わせ・プランニング:2〜3ヶ月
・工期:[マンション]3〜4ヶ月/[一戸建て]:4〜5ヶ月
なかなかプランがまとまらなければ着工時期も遅れてしまうため、スケルトンリフォームをすると決めたら、早めに動くのがおすすめです。
まとめ
スケルトンリフォームなら、間取りの大きな変更も可能で、空間を新築と同様に生まれ変わらせることができます。建物の工法によっては工事内容に制約がありますが、「できない」と一蹴するのではなく、新しい住まいに対する希望を汲み取った上で、代替案を提案してくれるリフォーム会社に依頼したいですね。
スケルトンリフォームの実例を多数掲載しています。マンション、一戸建てともに大幅な間取り変更によってこだわりを実現した住まいに。